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貴方を栄光の道へと導くコンパス
Luminaria Compuss
素材 Silver925/ガーネット
縦 2.7cm/幅 2cm
¥35,000
8号~35号
※石変更相談承ります。
※18KRGP(厚金メッキ)+¥2,000
Story
☆ 。 … ☆ 。
。 ★ ゜…
心の澄んだ者には、
妖精が見えるという。
☆ 。 … 。 ☆
★ ゜… ★
男は悩んでいた。ある薬が必要だった。
艶やかだった金髪は光を失い、美しい蒼い瞳には疲労の色が濃く宿っていた。
元々細かった手足は更に痩せ、青白い肌は潤いを欠いて目の下に深い影を落とす。
もう何日もまともに寝ていない。食事だって、最後に摂ったのはいつだったか。
ーー疫病が流行った。街の人々は次々と倒れ、笑顔が絶えた。
植物学者であった私は、なんとか己の持つ薬草の知識で人々を救おうと努めた。しかし、どの薬草も人々を回復させることはなかった。
だが、諦めるわけにはいかない。私はこの街の人々を助けなくては。人々の笑顔を、また見たいのだ。
この街の人々は、変わり者の私を受け入れて、優しい微笑みをくれた。放浪の旅の果て、ふらふらと辿り着いた自分に暖かいパンとスープをくれ、柔らかなベッドに寝かせてくれたーー。
不安で萎れそうになる心を落ち着けるように、彼は小さい頃両親に貰った鍵のペンダントを握った。この鍵はいつも彼に勇気を与えてくれたのだ。
大丈夫だ、必ず活路は開ける!自分にそう言い聞かせ、男はまたパラパラと本をめくる。
何処かに、何処かにあるはずなんだ。
目が霞む。しっかりしなくては。自分を叱咤し、本に向かう。必ず助けたい、この街の人を!
その時、積んだ本が崩れ、男の前に一冊の本が開かれた。そこには、神秘のレシピがあった。これだ。このレシピだ!
しかし、そこに書かれていた神秘の薬の材料のうち、ひとつだけわからないものがあった。
『妖精のハーブ』
これは一体なんだろう。長い間植物学をやってきたが、こんな名前のハーブは聞いたこともない。男はまた頭を抱えた。
コンコン。扉が鳴った。姿を現したのは、彼の旧友であった。友が住む街が大変だと聞いて、駆けつけたのだ。
男は友に事情を話した。話を聞いた友は、自分はそのハーブを知らないが、代わりにこれをと、懐から一つの包みを取り出した。
それは繊細な銀細工の指環だった。中央に柘榴石が嵌り、キラリと輝いている。
これは人の為に尽くす者を、必要な場所へと必ず導くだろう。
友はそう言い、指環を男の手に握らせ、眩い光と共に消えた。
男は礼を言い、『妖精のハーブ』を探すべく指環と共に森に入った。
森に入ると、自然と道が開ける不思議な感覚があった。男は自分の行くべき道を直感で分かるようになり、どんどんと森の奥に分け入る。早く、早く薬を作らねば。
男は気が急くあまり、足元に這う根に躓いて、その拍子に指環が木のうろに転げてしまった。
慌ててそれを拾おうと身を屈め覗き込むと、そこにはきらきらと輝く鍵穴が見える。
すると、首からかけていた鍵のペンダントが、まるで奇跡のように鍵穴へと滑り、それは見事にカチリと嵌ったのだった。
その瞬間、目の前に光が溢れた。あまりの眩しさに男は両手で目を覆った。覆っても尚、光は溢れた。洪水のような煌めきが、涼やかな音が、清涼な香りの風が吹く。
しばらくして目を開けると、そこには美しい世界が広がっていた。本でしか見たことのない、透けた美しい羽を持つ存在が、ふわりふわりと舞っている。
木々は煌めき、黄金の林檎がたわわに実り、光の玉がゆっくりと旋回し、金色の粉を振り撒きながら、楽しげな声を響かせた。
呆然とそれらを眺める男の前に、一層眩い光がスパークした。そして目を開けると、そこには絢爛なドレスを纏った、妖艶な女性が立っていた。
彼女はここを妖精の国だといい、自分は妖精の姫だと言う。
ここは人間は入れない場所、何をしに来たのだと問う姫に、男は事情を説明した。
姫はそれを聞き、男の真摯な態度に人間の善の可能性を認めたようで、男に一握りのハーブを与えた。
そして澄んだ声で告げた。
人間が清い心を忘れなければ、私たちは貴方がたに力を貸しましょう
人の為に良き事をしようという意思こそが、人間が善である証なのです
…気がつくと男は森の中に倒れていた。
ゆっくり身体を起こすと、その手にはきらきら輝く見たこともない美しいハーブが握られていた。
男はやおら起き上り、家に戻ると驚くべき速さで薬を仕上げた。その姿を見ている者はいなかったが、その背には輝く翼が生えていた。
そうして、男の作り上げた薬は街の人々を癒し、多くの笑顔が復活したのだった。
男が手にした、フェアリーゲートの鍵穴を見つける為のコンパスたる指環は、キラキラ輝く希望の光へと人を誘う。
そして見つけた扉を開く鍵は、いつも清らかな善の心を持つ者の手にあるのだ。
フェアリーゲートオープナーは、求めれば必ず手にした者を真実の光へと導くだろう。
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